おひとりさま終活と孤独死の葬儀マナー
近年おひとりさまで引退後の老後生活を送っている方が増えてきています。原因は人それぞれですが、孤独死のような様々なリスクを抱えてしまうのが実状です。また、孤独死は高齢者だけの問題ではありません。
今回の記事では、おひとりさま終活と孤独死の葬儀マナーについて詳しくご紹介致します。
終活の必要性
おひとりさまの場合、どうせ一人だから終活なんてしなくても良いものとして捉えがちなのですが、老後のおひとりさまには様々なリスクがあります。その様な点を踏まえ、おひとりさまでの終活の必要性についてお伝えしていきます。
まず最初に孤独死となる可能性が高くなる傾向にあるという点と終活についてです。孤独死とは、一人暮らしの方が居住していた住居などで誰にもみとられることなく最期の時を迎えてしまう事を指します。死に至る原因は人それぞれですが、孤独死を迎えるという事は助けを求めることが出来ずに亡くなってしまうという事です。近年ではご近所付き合いも減ってきている傾向にありますし死後気づかれるまでに時間が掛かる場合もあります。また、孤独死の場合には遺品整理も問題となってしまいます。大切な財産や書類などの重要なものがあったとしても事前に何もしていないと誰かに伝える事が出来ず、最悪の場合は処分されてしまう場合があります。また家族の方に譲る物が分かっていても整理が付いてない場合には探し出すことは一苦労です。現実的に孤独死をする方の多くは一人暮らしの高齢者の方です。この様な孤独死による様々なトラブルを避けるためにも、おひとりさまの方にも終活が必要だといえます。
また、孤独死だけのリスクだけでなく、病気や要介護状態などで動けない状態になったとしても、誰にも面倒を見てもらえず困ってしまうというリスクもあります。元気に体が動く内は、おひとりさまでも生活に支障はないですが、病気や怪我で動けなくなった場合にはおひとりさまでは誰かに頼る事すら困難な場合もあります。いざという時に頼れる家族がいたとしても、遠方にいるなどの場合には身の回りの世話をして貰うことは難しいときがあります。今現在は元気で生活になにも問題がなく充実した生活を送っていたとしても、いつ病気や怪我で動けなくなるかは高齢者の方に限らず分からないことです。例えば認知症になった際には、自分の意志を上手く伝えられなくなる場合もあるでしょう。元気な内にこそ、老後の医療・自分の葬儀の事などを含め終活をしておくことをおすすめ致します。
終活の内容
おひとりさまの終活でやることは数多くあります。多くは通常の終活と変わりないですが、おひとりさまならではの大切な事柄もありますのでそちらも併せてご紹介致します。終活を始める上で大切なことはこれまでの人生を振り返ることです。自分のこれまでを振り返ることによって、やり残したことやこれから何をすれば良いのかもわかりやすくなります。ですから人生を振り返ることが、終活の第一歩と言えるのでしょう。
おひとりさまの場合は葬儀の内容を生前に決めておくことをおすすめ致します。自分の葬儀のことを任せられる方がいらっしゃれば良いのですが、そういった方がいらっしゃらない場合などには残された方が困惑してしまう可能性がありますので自分の葬儀のことは自分で決め、生前に契約しておくと安心でしょう。またその際に、自分が入るお墓があるかどうかを確認しておく事も重要です。先祖代々のお墓があるか大丈夫と思っていた場合でも、実は永代使用権者の家族ではない等といった理由などで入ることができなかったという事もありますので注意が必要です。自分の入る予定のお墓の確認を怠らず、もしもお墓をお持ちでない方であれば生前に契約をしておけば心配する必要がなくなるでしょう。
財産の整理は特に重要な事柄になってきます。預金や証券などの財産がある場合には誰に引き継ぐのか・どのように活用をするか等をしっかり決めておく必要があります。仮に身寄りのないおひとりさまが遺言なしで亡くなってしまった場合には、財産はすべて国庫に入ることになります。ですから、家族だけでなく身の回りの世話をしてくれた人に譲りたいものがある場合などは必ず遺言書を作成し自分の意志を残しておきましょう。
近年、自分の意志や周りの方への感謝の気持ちを伝える為にエンディングノートを書く方が増えています。エンディングノートは、自分の人生の記録や最期の希望を書き記すものです。葬儀のことや死後のことについての希望を書くことで周りの方にあなたの意志を伝えられます。譲りたい遺品や大切な書類のことなども伝えられるので周りの方が遺品整理をする際の目安になります。しかし、エンディングノートには法的拘束力はありませんので、相続させる財産がある場合は、遺言書を作成することが重要です。相続に関する希望を遺言という形で残しておくと遺産をめぐる争いを事前に防ぐことが出来ますので、財産を誰にどれだけ相続したいのかが決まったら遺言を明確に示しておきましょう。
最後におひとりさまにおすすめしたい制度が「任意後見人制度」です。任意後見人制度は判断能力が低下してしまった際の為に備え締結できる制度です。締結をする場合には、判断能力がある内に行う必要がありますので、事前に信頼出来る方に相談をし後見人になって貰いましょう。任意後見人制度によって選んだ後見人は、判断能力が低下した場合や死後に財産管理や介護・医療などに関わる事務手続きを代行します。法廷後見人制度と違う部分は自分が信頼のおける人物を後見人に指定できる点になります。
終活を始める時期
具体的に何歳ごろから終活を始めたらよいのかと考えた際に思い浮かぶ年齢は人それぞれです。しかし、おひとりさまこそ早めに終活の準備をすることをおすすめ致します。具体的には四十代の気力や体力が十分にある年代です。
四十代というと早すぎると感じる方が多くいらっしゃるかと思いますが、自身が四十代になった頃のご両親はどうでしょうか。多くの方の場合はちょうど老齢に差し掛かる頃ではないでしょうか。もしかしたらご両親も自分の最期のことを考え、終活を始めている場合もあるかもしれません。実際、両親が終活を始めるタイミングにあわせ自分も一緒に終活を始める方が少なくはないのです。両親が亡くなることで兄弟姉妹がいない方は突然身寄りがいなくなってしまう場合があります。突然の孤独に見舞われた場合でも早めに終活を始めていたという事実は大きな意味をもつでしょう。
更に、四十代になると身体の衰えを感じたり病気にかかるリスクが人によっては増えてきます。最悪の場合には突然の病気などで、急に入院しなければならなくなることも考えられます。急に体力が落ちたり、病気になりやすかったりといった経験がある方も多い上、突然死のリスクも増加します。特に男性の突然死は四十代を過ぎると増える傾向にあるようです。いつ何があるかわからないという事は、年齢や病気のリスクに関わらず誰にでも当てはまる事です。大切なのはその事を頭の片隅に入れ、早めに終活を始めるといったような具体的に今からでも出来ることを少しづつでも始めておくことでしょう。
孤独死が発見された場合
一人暮らしの方が年々増えてきている現状と共に高齢者の方のみならず孤独死の件数も増えてきているのが実状です。孤独死に際した場合にはどのような対応をする必要があるのでしょうか。ここでは万が一、孤独死をしてしまった場合に発見からどのようにして遺族の方へと連絡が回り、遺族の方が遺体を引き取ってからはどのように火葬されて帰郷するのかについて詳しくお伝えしていきます。
孤独死の多くは、遺体が腐敗する匂いや家族や知人などの訪問がきっかけで発見されます。万が一、孤独死を発見した際に亡くなっているかどうかが判断出来ない場合にはすぐに救急車を呼びましょう。救急隊員が生死を確認し生存の可能性がある場合は病院へと搬送される事になりますが、事件性が疑われる場合などは警察へと通報されます。孤独死に際した場合には現場のものをむやみに触らないようにして到着後は警察の指示に従いましょう。
明らかに亡くなっていると判断が出来る場合には警察に連絡します。警察が到着した後、死亡理由や死亡時間の推定などの現場検証が行われる事になります。
現場検証により身元が判明すると、警察は死体検案書と共に遺体を遺族へと引き渡すように手配します。亡くなった方の公的書類や契約書を参照し遺族関係を調査し、親子>兄弟>親戚といったように血縁関係が近い順に連絡されるようです。発見者が大家さんの場合であれば、大家さんが家族や保証人の方へ連絡する場合もあるでしょう。
現場検証で身元が判明しなかった場合には、DNA鑑定などの検死を行う事になり遺体は専用の保管庫へと移動されるのですが、保管料が一泊で二千円程度かかりますので後日遺族へ請求される事になります。実際には孤独死では身元が判明した場合にも遺族が見つからないことが多くあるそうです。
遺族が見つかった場合には、警察から詳しい状況説明を受け家宅捜査で一時没収されていた貴重品や住居の鍵などを受け取り、遺体の引取りや遺品整理等も要求されることになるようです。一般的には遺体を保管している葬儀社から遺体を引き取り、そのまま現地すぐに火葬する事になります。住民登録をしている自治体の方が火葬費用が安いですし、他の地域に搬入するとなると霊柩車を手配する必要もありますので、わざわざ住民登録している場所以外での火葬はあまりおすすめできません。このような事情や流れにより、遺体は引き取った現地で火葬される事が多いので基本的にお骨の状態で帰郷されます。
孤独死の予防
親族がいた場合にも全く縁がないという理由で遺骨の引き取りを断られる場合も現実ではあり得ます。引き取りを断られた場合や親族がいない場合には遺骨・遺品は自治体が管理することになりますが、ずっと管理をしているという訳にもいきませんので一定の保管期間が設けられています。この期間は各自治体によっても異なりますが、おおよそ五年程度である場合が多いようです。この期間が過ぎると遺骨は「無縁塚」に埋葬されます。無縁塚とは、身寄りのない方の遺骨がまとめて埋葬されているところを指します。その為、後から特定の遺骨を取り出すことは不可能です。引き取り先がない場合の遺骨も個別にお墓を作って埋葬されるということはありませんが、無縁塚といえども埋葬自体はきちんと行われますので安心です。
孤独死は可能であれば避けたいものという事は間違いないですが、現実的に何かあった時の為に今からしておけることがあります。例えば周囲の人とコミュニケーションをとる事です。一人暮らしをしている方は女性の方が比較的多いですが、孤独死の割合は男性の方の方が多いと言われています。男性はひとりで活動しがちになる傾向があり万が一何か異変があった場合にも気付いてもらえないことが多いのです。反対に女性はコミュニケーション能力が高い方が多い傾向にあり何かあった際にも気付いて貰える可能性が高いのです。とは言え男性・女性に関わらずコミュニケーションを取ることが苦手な方はいらっしゃいます。ですが孤独死を防ぐ為には周囲の人とのコミュニケーションが重要なので、少しづつでも付き合いを増やしていけると良いでしょう。また、訪問介護や日用品などの宅配サービスや宅食サービスなどの自宅まで来てくれるサービスを利用してサービススタッフの方と日常的に関わりを持つ事も何かあった時の一助となりますので、機会があればそうしたサービスを利用するのも良いと思います。
また、相続の事前相談や準備をしておく事や葬儀の事前相談や準備をしておくことで、万が一の時の備えになります。
孤独死の葬儀費用
遺族の方がいる場合と遺族の方がいない場合とでは誰が葬儀費用を負担するのかは当然変わってきますのでそれぞれのケースを順番にお伝えしていきます。
まずは遺族の方がいる場合ですが、一般的な葬儀と変わらず喪主を務めるご親族が葬儀費用を負担する場合が多くなります。どの様な葬儀を執り行うのかだけでなく、葬儀社によっても葬儀費用は変わってきますので遺族の方は確認する事が大切です。葬儀費用には香典があてられる場合もありますので、全額負担しなければいけないと最初から落胆するのではなく、頂ける香典の額によっては費用がある程度軽減される事を視野に入れておくと良いでしょう。
次に遺族の方がいない場合ですが、亡くなった方の身元が判明している場合には「葬祭扶助」という経済的に困窮している人に対し最低限の葬儀を行える給付金を自治体から受け取れることもあります。読経などを省いた火葬のみの直葬が行われるのが一般的で支給金額は二十万円前後が目安となっています。ただし故人に遺産がある場合にはそこから引かれることになりますので給付金対象外になります。葬祭扶助が受けられる条件は、亡くなった方が生活保護を受けているなど経済的に困窮している場合・扶養義務者がおらず遺族以外の人が葬儀を手配する場合になります。いずれかの条件を満たしていると、喪主あるいは葬儀社が自治体に事前申請することにより葬祭扶助が受け取れます。