喪中のお中元と喪中見舞いのマナー
日頃から親しくしている方やお世話になった方へ感謝の気持ちを込めて贈るお中元ですが、ご自身や相手先が喪中の際にはいつも通りお中元を贈ってもよいものか悩む方もいらっしゃるかと思います。また、身内に不幸があった際に親しい方やお世話になった方に喪中はがきを送ります。その喪中はがきを送ってくれた相手に対し、お悔やみと励ましの気持ちを込めてはがきや手紙、品物を送ることを指しのが喪中見舞いです。
今回の記事では、喪中のお中元と喪中見舞いのマナーを詳しくお伝え致します。
喪中のお中元を贈る場合のマナー
まず始めに喪中の相手にお中元を贈っても良いのかという問題ですが、喪中とは身内や近親者が亡くなった際に死を悼む期間のことを指します。喪中の期間は結婚式や新年の挨拶などのお祝い事は控えた方が良いとされています。結論から言えば、相手が喪中の時にお中元を贈っても問題はありません。そもそもお中元は、道教の年中行事である死者の罪を許すことを願う「中元」と仏教の祖先の霊を供養する「盂蘭盆会」とが融合し、江戸時代以降にお盆のお礼として親戚やお世話になった人への贈り物をする習慣に発展し、現在のようなお世話になった方々への感謝と健康を祈るという意味を込め夏に贈るようになったと言われています。その為お中元はお世話になった方々への感謝と健康を願う気持ちを伝える「季節のお見舞い品」でありお祝い事に当てはまりませんので喪中でも贈れるということになります。
ただし、相手が忌中である時は忌明けしてから贈る方が良いとされています。
自分が喪中の場合のマナー
続いてご自身が喪中の時にお中元を贈っても良いのかという問題ですが、先ほどもお伝えした通りお中元は日頃の感謝の気持ちを伝えるものなので、自分が喪中の時でもお中元を贈ることに問題はありません。ただし、この場合にも忌中期間はお中元を贈らないようにしましょう。忌中期間が明けるのを待つと一般的なお中元を贈る時期を過ぎてしまった場合には無理にお中元として贈らずに「暑中御見舞」や「残暑御見舞」として贈り、表書きも同様にすると良いでしょう。
反対に、ご自身が喪中の時にお中元が贈られてきた場合についてですが、この場合はお中元を受け取っても問題ありません。お中元を受け取ったら可能な限り早めにお礼状を書くようにしましょう。お礼状は白無地の便せんにボールペンや毛筆で書きます。
熨斗紙のマナー
喪中にお中元を贈る際には、熨斗紙の選び方にも気を遣う必要があります。一般的なお中元の熨斗紙は紅白の水引が使用されるケースが多いのですが、紅白の水引は慶事に使用されるものですから喪中のお中元の熨斗紙としては相応しくありません。ですから、喪中にお中元を贈る際には無地の奉書紙または白い短冊に「御中元」と表書きをして贈るようにしましょう。なお、短冊は略式となりますので会社の取引先や目上の方などにお中元を贈る際は短冊の使用は避けましょう。
季節の挨拶のお中元は自分や相手が喪中であっても贈ることが出来るということはご理解頂けましたでしょうか。季節のお見舞い品として相手に贈るお中元は、人との繋がりを大切にしてきた日本の慣習です。お中元を贈る側・贈られる側の双方で思いやりや心遣いを大切にし、気持ちのよいやり取りを心がけることが出来たら良いでしょう。
喪中見舞いのマナー
喪中見舞いは喪中の方へお悔やみの気持ちを届けることを指しますが、一般的には喪中はがきへの返信として「寒中見舞い」です。寒中見舞いと喪中見舞いは何が違うのでしょうか。まずは、喪中見舞いを出す本来の理由とそこから分かる違いについてお伝えしていきます。
喪中見舞いは訃報に対するお悔やみを伝える手段で、比較的新しいお悔やみの方法です。大きな特徴は「送る時期に決まりがない」ことで、はがきでの返信はもちろんの事、香典や線香などのお供え物を送ることも可能です。喪中はがきは訃報を知らせるものと感じる方も多いかと思いますが、本来は年始の挨拶を控えるという旨を伝えるための欠礼状です。ですから、喪中はがきに対し返信するのではなく寒中見舞いとして時候の挨拶に変えていたのです。喪中はがきは年賀状を出し終える12月半ばより前に届くので、寒中見舞いを出せる年明けまで半月以上空くことになります。それよりも先にお悔やみを伝えるツールとして喪中見舞いが誕生したのです。送る時期に決まりこそありませんが、誕生の背景を考えると受け取ったら年末までには届くように送ることが望ましいでしょう。
先にお伝えした内容から気付いた方もいらっしゃるかもしれませんが、喪中見舞いと寒中見舞いの大きな違いは「送る時期」です。送る時期に決まりのない喪中はがきに対し、寒中見舞いは松の内から立春の間(一月七日から二月四日)と送る時期が決まっています。※松の内の期間は地域によって多少の違いがある場合もあります。これは、寒中見舞いは暑中見舞いなどと同じ時候の挨拶状であることが理由です。汎用性が高い挨拶状ですので、喪中の方への挨拶に限らず通常の年賀状を出しそびれた場合にも使われることがあります。このように、喪中見舞いと寒中見舞いは送るタイミングだけでなく内容そのものが違うのでうまく使い分けると良いでしょう。
近年、家族葬など規模を縮小した葬儀を執り行う方が増えてきました。そのため、喪中はがきを受け取って初めて訃報を知ることもあります。喪中見舞いはそういった場合にお悔やみの言葉をすぐ届けることができるものです。寒中見舞いのように決まった期間はないものの、お悔やみ状という性質を考えると受け取ってからお見舞いを出すまでの時間は短い方がスマートでしょう。葬儀が済んで間もない頃であれば、親しい人からの喪中見舞いで励まされるものです。また、近頃は香典を辞退することも珍しくないため、言葉だけでなく故人が好きだったものやお線香を送ることができる喪中見舞いは相手を気遣ったお悔やみと言えるでしょう。
喪中見舞いを送る場合のマナー
送る時期にこそ厳格な決まりがない喪中見舞いですが、はがきなどに書く文章についてはマナーを意識しなくてはなりません。また、葉書の代わりに香典や品物を送る際にも注意することがいくつかあります。ここからは喪中見舞いを送る際の一般的マナーをご紹介致します。
喪中見舞いの手紙やはがきでは、喪中はがきに対するお礼として冒頭に「ご丁寧なご挨拶状ありがとうございます」などと書くのが一般的です。文中には「ご服喪中につき新年の挨拶を控えさせていただきます」といった旨の一文も入れます。これにより、喪中はがきの内容を了承したということになります。この他に相手を気遣う内容や新年への希望を感じさせる言葉を添えておくと事務的になりすぎず気持ちを伝えられます。手紙の場合、頭後、結後や季節の挨拶は使用しません。
以下に状況に分けて例文を用意しましたので参考にしてください。まずは通夜や葬儀に参加せず喪中はがきで初めて亡くなったことを知った場合の例文です。
- 喪中見舞いの例文
- このたびはご丁寧なご挨拶状をいただきありがとうございました
- お手紙を拝見して初めて○○様のご逝去を知りました
- 存じ上げず失礼いたしましたことをお許しください
- お悔やみ申し上げますとともに○○様のご冥福を心よりお祈り申し上げます
- ご服喪中でいらっしゃいますので新年の挨拶は控えさせていただきます
- お気を落とされていることかと存じますが
- どうぞお体を大切に新しい年をお迎えになられますよう心よりお祈り申し上げます
続いて既に弔問を済ませている場合の例文です。
- 喪中見舞いの例文
- このたびはご丁寧なご挨拶状をいただきありがとうございました
- ○○様が亡くなられてから○カ月になりますね
- 徐々にではございますが寂しさも和らげばと心よりお祈り申し上げます
- (遺族名)様におかれましてはおだやかな新春を迎えられますよう心よりお祈り申し上げます
喪中見舞いの品物と一緒に簡単なメッセージを添える場合には「心からお悔やみ申し上げます」や「ご訃報に接し 心から哀悼の意を表し 安らかにご永眠されますようお祈り申し上げます」などと添えても良いでしょう。また、例文からも分かるように、喪中見舞いでは句読点を使用しません。そこに加えて大事なのが忌み言葉を使わないことです。更に悲しみから立ち直ってほしい気持ちから励ましの言葉をかけたくなりますが、遺族にとってはその悲しみを昇華させる時間も必要です。直接的な励ましを言わずとも、喪中見舞いを受け取ることで励みになることでしょうから、励ましの言葉はあまり使用しないようにしましょう。
その他のマナー
喪中見舞いに使うはがきは、相手の気持ちを考えて華美なデザインは避け、グレーやライトブルーなどの寒色をベースとしたものを選ぶのがポイントです。ご自身で作ったはがきでも問題ありませんが、郵便局やインターネットで喪中見舞い用のはがきを購入することも可能です。郵便局では菊や紫陽花をあしらったデザインのはがきが販売されているのでそちらを利用しても良いでしょう。私製はがきを使う場合は、使う切手も喪中見舞いに合ったものにします。通常の切手でも構いませんが、郵便局で弔事用の切手を購入するとより丁寧です。郵便局で購入する場合は、窓口で喪中見舞いに使うことを伝えると迷わず購入できます。
香典やお供え物など品物を喪中見舞いとして送る場合には注意することがあります。まずは香典についてですが、喪中見舞いを送るタイミングが四十九日の前なのか後ろなのかで表書きが変わります。四十九日より前であれば「御霊前」後であれば「御仏前」となるので送る時期がどちらに該当するのか確認しましょう。また、この表書きは神式では「玉串料」、キリスト教では「献花料」と宗教によっても変わるので注意が必要です。そして、現金は現金書留で送ることが法律で定められているため、香典を送る際は送り方にも気をつけましょう。現金書留専用の封筒を郵便局で購入し、その封筒に香典袋を入れることもできます。
お供え物を送る場合、一般的にはのしをつけます。表書きは「御供」や「喪中見舞」とし、結び切りの水引を選びましょう。金額の目安は三千円から五千円ほどで受け取った側が負担になるような高額なものは避けましょう。どちらを送る場合であっても、金品だけを送るのではなくメッセージを添えましょう。例文でもご紹介したような相手を気遣う内容がいいでしょう。
近年では、喪中のお知らせをメールやSNSですることも珍しくありません。そういった手段で受け取った連絡に同じ手段で返すことは失礼には当たりませんが、はがきで連絡を受けた場合にメールやSNSで返信することはマナー違反にあたるので気をつけましょう。また、メールやSNSは封書やはがきに比べてカジュアルな文章になりやすいので言葉選びにも気を配ることが大切です。