香典の受け取り方と香典帳のマナー
葬儀や通夜の受付を依頼された際、香典の受け取り方がわからなくて戸惑った経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。香典の受け取り方のマナーに加えて、対応方法や受け答えにもマナーがあります。また、多くの方が訪れるお通夜や葬儀では、しっかりと管理していないと誰からいくら香典を頂いたか分からなくなってしまう可能性もあります。そんな時に役立つのが香典帳です。香典帳にはどのような項目があると便利なのかはご存知でしょうか。
今回の記事では、香典の受け取り方と香典帳のマナーを詳しくお伝え致します。
自作の香典帳のマナー
市販の慶弔用記録ノートを使用すると手軽に済ませることができるのですが、多くは項目が限られており、先に挙げたような香典帳に必要な項目は他のもので管理する必要が出てきてしまう場合がほとんどです。その為、自分で香典帳の仕様を作成すると、自分に必要な項目を1ヵ所にまとめることができ、より便利に香典帳を活用することができます。
ここからは、香典帳の作成方法についてお伝え致します。
- 手書きで作る香典帳
- 昔から行われているのが手書きによる香典帳の作成です。あらかじめ記入する項目を決めてから枠線を引いて表を作るとスムーズです。しかし、手書きの場合は金額の計算や氏名の記入に手間がかかる点にも注意しましょう。参列の人数が多くなればなるほど作成や計算に時間がかかります。ご自身の負担と参列者の人数を考慮して手書きにするか、別の方法にするかを判断することが大切です。また近年では百円ショップなどでも「お付き合いノート」といった専用のノートも販売されているので、気軽に購入出来ますので使いやすいものを選んでも良いかもしれません。
- テンプレートで作る香典帳
- 一から作成するのではなく、インターネットでダウンロードした香典帳を使用する方法もあります。項目があらかじめ設定されていますが、使用者が使いやすいようにと各作成者が工夫を凝らしたものが多いですので、ご自身に合っているものを選んでダウンロードすることができます。また、テンプレートは基礎の部分をカスタマイズすることも可能なことが多いですから、パソコンに慣れている方は楽に感じるかもしれません。数値などを手書きで記入したい場合は、テンプレートのみプリントアウトして利用するのも可能です。香典帳のテンプレートは、インターネット上で無料配布されているものも数多くありますので検討してみても良いでしょう。
- 表計算ソフトで作る香典帳
- エクセルなどの表計算ソフトを用いた表の作成が得意だという方は、ご自身で香典リストを作成しても良いでしょう。表計算ソフトで香典帳を作成した場合、関数を利用すれば50音順に並べ替えたり、金額順、関係順に並べ替えることも可能になります。高額な香典返しが必要な方の有無や関係別でどなたが参列していたのかなどを調べたい場合には項目別に並べ替えることが出来る表計算ソフトを用いることで簡単に分かります。加えて手書きと比較すると読みやすく、加筆や修正も簡単です。連絡ツールを活用してデータを共有すれば、離れて暮らす親族間でも簡単に情報の共有ができるという利点もあります。
また、香典帳を自作する他にコストはかかってしまいますが、業者に依頼して作成してもらうという方法もあるようです。作業の手間が省けるのが利点ですから、参列者の数やご自身の使える時間を考慮し利用の有無を検討すると良いでしょう。
香典帳を作成するためには、参列した方の氏名や香典金額などの情報が必要です。これらの情報が残せるように香典帳作成に向けて準備が必要です。ここからは、香典帳を作成する際に知っておきたい点について詳しくご紹介致します。
香典袋には名前と金額・住所を記入しますが、記入漏れがある可能性も考えられます。住所や連絡先がないと香典返しの送り先が分からない場合もあるので注意しましょう。不備なく香典帳を作成するためには、参列者の名前と住所を記入する「芳名帳」や「会葬カード」を用意すると良いでしょう。必要な情報をそろえるために、葬儀の受付で参列者に対して芳名帳や会葬カードへの記入をお願いします。名前や住所・連絡先などを記入してもらい、香典帳を作成する際に香典袋と併せて確認しましょう。
また、香典帳をスムーズに作成するためには香典袋に書かれた氏名や金額が必要です。香典を取り出した後も香典袋を捨てないように注意しましょう。また、香典帳作成後も記入内容をチェックできるよう、最低でも香典返しが終わるまでは香典袋を保管することが大切です。
香典帳を作成する場合のマナー
香典帳は頂いた香典の額や名前を書き込むだけのものではありません。作成したリストは香典返し以外にも様々な面で役立ちます。まずはなぜ香典帳を作成するのかが分かるように香典帳の目的からご紹介致します。
- 香典返しの為
- 香典帳を作成する最大の目的は香典返しです。お通夜や葬儀に参列する方の多くは香典を持参します。一般的な香典返しでは頂いた香典の半額から3分の1をお返しするのがマナーであるため、誰からいくら香典を頂いたのかを正確に把握する必要があるのです。葬儀前後はやるべきことが多く慌ただしくなってしまう為、香典返しに漏れがないようこうしたリストの作成は重要です。
- 葬儀後の挨拶の為
- 葬儀後の挨拶として故人が生前お世話になっていた方にお礼状を出したり、葬儀などを終えた報告に伺ったりします。またお通夜や葬儀に参列していなくても、香典やお供え物・弔電といったようなものを送っていただいた場合には同様にお礼をしたほうが良いですから、香典帳があると住所や頂いたものを改めて調べる必要がなくスムーズにお礼をする事が可能です。
- 法事の案内をする為
- 香典帳は法事の案内をする際にも役立ちます。四十九日や百箇日・一周忌や三回忌などの法要には、家族や親族だけでなく故人が生前親しくしていた方が参加することも少なくはありません。身内の方への連絡は電話でも問題ありませんが、お世話になった方への連絡はハガキやお手紙で案内状を送ったほうが良い場合も多いでしょう。そうした際にも作成した香典帳を開けば法事の案内の送り先が一目で分かります。葬儀から時間が経過した際にも漏れなく法事の案内を送るために香典帳は重要です。
- 冠婚葬祭の目安にする為
- 香典帳が役立つのは葬儀や法要に関連することだけに留まりません。お世話になった方の冠婚葬祭に出席する際、持参するご祝儀や香典の金額を考える目安にできます。お渡しする金額に差が出て、相手に失礼とならないように同額を返すといった様な対応も可能となります。この様に香典帳は冠婚葬祭におけるやり取りの判断の基準となる役割もあります。
また、香典帳を作成することによる様々な利点があります。ここからは香典帳を作成する利点について詳しくお伝え致します。
香典帳の大きな利点として挙げられるのが、必要な情報をきれいにまとめられるという点です。香典帳を作成する際には「相手の氏名・香典の金額・住所や連絡先」を記入しますが、さらにお供え物や弔電などの情報も一緒に管理することが可能です。また、ご自身が知らなかった故人の友人やお世話になった方がいた場合は、故人との関係性を簡単に書き記しておきましょう。法事のご案内や相手方の冠婚葬祭の際にも参考になります。
また、香典帳は香典返しを忘れることを防ぐという利点もあります。香典を頂いた際には後日香典返しをするのがマナーです。香典袋には相手の氏名や金額が書いてありますが、中には氏名や金額の書き忘れがあるかもしれません。頂いた香典を整理する際に氏名と金額をリストアップしておけば、後ほど香典返しの用意を忘れてしまったり金額が不足したりといったことを防げるでしょう。今後のお付き合いを円滑に行うためにも香典帳が役立ちます。
香典返しやお礼の品物を用意する際にどの程度の金額の品を用意したら良いのかを迷う方も多いでしょう。香典帳には頂いた香典の金額やお供物を書き込んでおけるので、半額や3分の1など金額の予算が立てやすくなるのが利点です。故人との関係性や葬儀で特別お世話になった方や大きな額のお香典を頂いた方が分かるように記入しておけば、特別なお返しをしたい場合にも金額の目安を設けやすいでしょう。
香典帳に必要な項目のマナー
香典帳には氏名・住所・連絡先・頂いた香典の金額を記入しますが、それ以外にもまとめておくと便利な項目があります。紹介する項目全てを記入する必要はありませんが、ご自身の好みや必要性に合わせ選んでみてくださいね。
- 必要な項目
- ・氏名
誰から頂いた香典なのか把握する為に氏名が必要です。名字だけですと同じ名字の方がいる場合には混合してしまう恐れもありますので、姓と名前の両方を記入しましょう。相手の会社や役職が分かる場合には併せて書き込むと便利です。また、団体で香典を頂いた場合には団体名と個人名を記入するのがおすすめです。 - ・金額
香典返しの金額を決める為には、頂いた香典の金額も必要事項です。金額が分かれば半額や3分の1の金額が分かり事前に予算を立てられます。 - ・住所
香典返しだけでなくお礼状や法事のご案内を出す際にも住所を使用します。また、香典を郵送で頂いた方の住所も忘れずに書き込んでおきましょう。 - ・連絡先
お礼の品物を送る際や不明点がある場合に必要なのが電話番号などの連絡先です。こちらも漏れなく記入しましょう。 - ・弔電有無
葬儀に出席できず弔電を送ってくださった方についても記載しておきましょう。 - ・お供え物の有無
お供え物や供花を頂いた方にはお礼状やお返しが必要な場合もあります。後ほどお礼をする際の参考になるので、頂いた方や品物の内容・価格などを分かる範囲で記入しましょう。 - ・葬儀参列か弔問か
葬儀への参列かその他のタイミングで弔問かについて記入しておくと、後にお礼状を贈る際にスムーズにお礼が述べられます。 - ・香典返しの品名と値段
送った香典返しの品名・値段についても記載しておけば、後ほど見返す必要が生じた際に速やかに思い出せます。 - ・配送か直渡しか
香典返しを配送したのか直接渡したのかについて記載しておくと、後々のやり取りの際に役立つかもしれません。
葬儀の受付を依頼された場合のマナー
葬儀において受付を依頼された方にとって、どのように受け答えしたらよいか悩むことでしょう。受付は近所の方や同僚・友人など近しい関係にある方が亡くなった際に依頼されることがあります。受付になると一般の参列者とは異なり、様々なフォローをする必要があります。そこで、対応可否を踏まえた上で依頼に対する返事をしなくてはなりません。また、返事をする際も失礼にあたらないように配慮することが大切です。受諾可能な場合と対応が困難な場合それぞれの返事の仕方についてまずは確認していきましょう。
遺族が葬儀の受付を依頼する相手は、それなりの関係性があり遺族から信頼を置かれた方と言えるでしょう。特別な事情がない限りはできるだけ引き受けることをおすすめ致します。直接遺族から依頼された際は、一言お悔やみの言葉を添えて引き受けることが大切です。例えば「この度はお悔やみ申し上げます。私でよろしければ受付をお受けいたします」といった言葉を添えればよいでしょう。また、依頼を受ける際は葬儀会場や日程などの重要事項を後から失念しないようしっかりメモをすることが重要です。
受付を依頼されたとしても、事情によっては止むを得ず断らなければならないことも考えられます。このような場合は、できるだけ早い段階ではっきりと断ることが大切です。返事を引きずってしまうと、遺族が他の人に手配することもできなくなりますので迷惑がかかってしまいます。受諾できない旨を伝える際は、遺族の気持ちに寄り添って配慮することが大切です。例えば「この度はお悔やみ申し上げます。ぜひお受けしたいところですが、止むを得ない事情がありどうしてもお受けすることができません。〇〇様のご冥福を心よりお祈りいたします」といった言葉を添えた上で、他に代理を頼めそうな人がいる場合は提案してみるのもよいでしょう。
香典の受け取り方のマナー
香典を受け取るシチュエーションは、遺族として受け取る場面あるいは受付として受け取る場面が大半です。遺族として受け取る場合は「恐れ入ります」と一言添える受け取り方が通例であり、普段用いる「ありがとうございます」はTPOをわきまえていない言葉としてタブーとされています。このように、遺族の場合も気を払う必要がありますがそれ以上に受付をする場合のほうが気を払うことは多くなるでしょう。受付をするということは一時的とはいえ遺族側の一員となります。また、お金に関わる作業でもあるため、マナーを踏まえて丁寧に行わなければなりません。遺族の立場に立っていることを念頭に置いて、スムーズに対応するように心がけましょう。
香典の受け取り方を具体的な流れに沿って順番に説明致します。
香典を納受する前に、芳名帳の記帳をお願いする必要があります。喪主は芳名帳に書かれた名前や住所を元に香典返しの準備をします。そのため、参列者には漏れなく記帳してもらわなければなりません。中には、香典を渡してすぐに会場へ入ろうとする参列者も見られるため「お名前とご住所のご記入をお願いいたします」といった一言をかけてご案内しましょう。場合によっては、受付ではなく別の場所で芳名カードに記入していただく形をとることもあるのでわかりやすい案内と丁寧な言葉で伝えることが大切です。
芳名帳に記帳していただいたら、香典を納受します。実際に納受するのは遺族であるため「お預かりします」という言葉をかけるのが適切な返事です。その際は両手で納受するのがマナーなので、片手で受け取らないように注意しましょう。芳名帳に記帳する場所が受付から離れている場合は、記帳前に香典を納受するケースもあります。また、納受した香典は会計係に渡したり特定の場所に保管したりしますが、参列者が受付にいる間は失礼にあたるのでその場を去られた後に行うのがマナーです。
香典に対する返礼品は、香典を納受していただいた直後に渡すのが通例です。返礼品をお渡しする際は「こちら御礼の品でございます」といった一言を控えめに添えて手渡します。香典返しを後日に行うケースでは、会葬礼状をお渡しする場合もあります。返礼品もしくは会葬礼状を手渡したら会場へ案内しましょう。
近年では、香典を辞退する遺族も増えています。その際は葬儀のお知らせをする段階で香典辞退の旨も添えられているのが通例ですし、受付に「香典は辞退申し上げます」といった張り紙をするケースもあります。とはいえ、気持ちを伝えたいという方は香典を持参する可能性があります。しかし、ご遺族が香典を辞退する以上受付では対応できません。受け取ってしまうと後になってトラブルになる可能性もあるため、厚意に対する感謝を述べた後に遺族の意向を丁寧に伝えましょう。場合によっては親族の香典だけは納受することもあるため、その際には他の参列者に配慮することが大切です。
受付におけるマナー
受付を引き受けた場合は、参列者ではなく遺族の立場になりますから、マナーをしっかりと熟知し失礼のないよう努めることが大切です。参列者と言葉を交わすことが多い受付は言葉遣いや挨拶の仕方をしっかりと押さえておかなければなりません。ここからは受付業務における注意点についてご紹介致します。
参列者が受付についたら、まず丁寧に挨拶をしましょう。「本日はお忙しい中、ご参列いただきありがとうございます」といったシンプルな一言で問題ありません。また、雨や雪などで天候が優れない日の葬儀では「お足元の悪い中、ご参列いただきありがとうございます」という言い回しでも良いでしょう。参列者が喪主の親族にあたる場合は「この度はお悔やみ申し上げます」という言葉を添えるのが通例です。
葬儀は悲しみの中で行われる儀式であり、その場に会す人たちはそのTPOを重んじるのが適切です。例えば、穏やかな落ち着いたトーンで話す・忌み言葉を使用しないといった配慮があるでしょう。それに伴い、葬儀の受付で「くれぐれもお気をつけて」や「重ね重ね御礼申し上げます」といったフレーズを使わないように意識しておくことが大切です。その他、数字の「4・9」も忌み言葉にあたるので注意する必要があります。
受付を担当する際、服装のマナーも守らなければなりません。参列者にとっても欠かせないマナーですが、受付は遺族の立場でもあるためより配慮する必要があります。参列者のマナーと変わりないので気負うことはありませんが、一般的な服装のマナーを確認しておきましょう。
基本的に、黒いスーツやワンピースを着用しましょう。参列者の場合ダーク系の色であれば問題ないとされますが、受付を努める場合は黒が無難です。靴下やストッキングも黒を選び肌の露出は抑える必要があります。また、受付は長時間立って行う必要があることも多いため靴にも注意を払いましょう。社葬の受付を努める際は従業員規定の制服でも問題ありません。ただし華美な制服ではない場合に限ります。
結婚指輪以外のアクセサリーは、原則としてマナー違反となります。ただし真珠に関しては身に着けても問題ありません。また時間の管理も必要となるため時計も着用可能ですが、派手な色やデザインを避け黒いベルトのものを選びましょう。
葬儀の受付では控えめなメイクがふさわしいでしょう。ノーメイクにする必要はありませんが派手な色合いやラメなどを使わないように心がけることが大切です。また、グロスも派手さを伴うので避けることをおすすめ致します。髪の毛は慎みを持って清楚に束ねましょう。特に、挨拶や香典を納受する作業を行う受付では長い髪が邪魔になる可能性があります。事前に葬儀用のバレッタやリボンなど、目立たない小物を準備しておくと安心です。
葬儀の受付を滞りなくスムーズに行うためにはその他の注意点も押さえておきましょう。当日になって慌てないためにも全体の流れを踏まえた上で、ポイントを事前に把握しておきましょう。
葬儀は遺族だけではなく、故人と懇意にしていた方にとって最後の別れとなる大切な儀式です。葬儀開始時間より早く会場入りする参列者も多い事も考えられます。受付は遺族側の立場に立って参列者を迎える役割でありスムーズに案内する係ですので参列者より後に会場入りすることは避ける必要があります。可能であれば葬儀開始の1時間前には会場入りして、抜かりなく準備をするように心がけましょう。また、葬儀のスケジュールや会場の配置など、わからないことがあると受付に尋ねる方が少なくありません。従って、葬儀の流れや館内図を事前に覚えておくことが重要です。特に大きな会館の場合には複数の葬儀が行われている可能性もあります。参列者が迷わないように早めに会場入りして確認しましょう。また、葬儀が始まった後も遅れて参列する方のために受付に留まる場合も考えられます。焼香のタイミングに間に合わない可能性もありますから、事前に焼香を済ませる場合もあります。ただし、先に焼香を済ませる際は遺族に了承を得た上で行いましょう。場合によっては参列者に続いて焼香をすることもあるので葬儀社のスタッフに確認することも大切です。